そして、そのビジョン会議は、その後の事件の騒動となる2つの点を除いては、とりあえず大きな波乱もなく進行しました。
1つは、他部門との業務のすみ分けについて発言したときです。わたしは、「現在、他部門との役割分担がいびつで業界標準になっていないので、ここの業務は、将来的には他部門と喧嘩してでも、こちらも部門の範疇としたほうがいい」と比喩的に表現したところ、上司の河豚田さん(仮称、骨川さんと、磯野さんの上司にあたります)が、「喧嘩はよくないな」「喧嘩腰ではなくて穏便やり方をでしないと」とわざわざ会議を脱線させて、わたしをたしなめるような話をはじめたのです。
わたしは、前後の文脈から比喩的に表現しているのは誰でもわかるはずなので、何か引っかかるなと思いました。
もう一つは、同僚(同ポジション)の剛田さん(仮称)です。
剛田さんは、会議の出席者では最も社歴が浅く、年齢はわたしより推定5歳以上は年上の方です(50台半ば?)。
前職は、誰もが知る大手企業の子会社出身で、そこで総責任者をやっていた方です。キャリアからすると私よりもずっとあり、本来であれば、私と同じ課長クラスではなく、1つうえのポジションで入ってもおかしくはない方です。実際話すと、われわれの現場のことをよく知っています。ただ、現場のことだけよく知っている人間は業界にごまんといるのですが、収益構造もよく理解していました。現場のことを知っている人間で、わたしが強みとしている収益構造まで理解している人間は、わたしは業界ではじめて会いました。
ちなみに、わたしの骨川と磯野さんは、お世辞にもこの収益構造を全く理解しているとは思えません
われわれの仕事は、モノができるのに10年単位でかかるのですが、だいだい7合目くらい差し掛かると、ゴールが見えてきて、最終的に黒字になるのかどうかわかります。
この方たちは、業界歴30年以上で、数々のプロジェクトを仕上げたのが自慢の世代のようですが、昔は大いなるお国のバックアップがあった世代なので、何となく作ってもそのバックアップで何とかなった時代です。なので、コストについて何も考える必要もなかったようです。わたしは、この世代の人をODA世代と呼んでいます。
ODA世代が作ったプロジェクトを見てみると、収入もコストも開発期間もすべて薔薇色のような数字がインプットされています。彼らは、いつも想定外の事態により収支が悪化…と言い訳していますが、わたしからすると最初から見込み甘々の数字を入れてたのが、露呈してきただけだろって感じです。(あと外資あるあるですが、確信犯的にやっているところもあると思います)
話が逸れましたが、剛田さんの話です。
とにかく、彼は過去はずっとトップでやってた方なので、それが染みついているところがあり、普段はまだいいのですが、会議になるとどうも血が騒ぐところがあるようなんです。
とある専門的な分野のことで、剛田さんから「それは、なんでそんな信頼性が低い機械を使っているのか」という質問がありました。
剛田さんは、業界ではわりとスタンダードとされているメーカーの機械の事を指して言っています。しかし、実はその機種もけっこうな弱点があるのがわかっています。
そこで、他のマイナーメーカーでその部分の信頼性が大きく向上したという噂の機種があったので、わたしのチームでは、今年からそのマイナーメーカーの機種を導入して実証を行っていました。
その結果は良好でした。なので「剛田さんが指している機種とは違う機種の導入し、ここ1カ月の稼働実績では十分な信頼性が確保できています。なので、今後、そこはもう心配はしなくていいですよ」と回答しました。あくまでも、同僚として、いいこと教えてあげる的な話です。
すると剛田さん「1カ月!!そんなので何がわかるんだ!!」
わたし「あくまでも中間結果だけど今後も条件はほぼ変わらないから、問題ないと考えていいと思いますよ」
剛田さん「(`Д´)!! そんなのいいから、6ヵ月使ってからもってこい!!」
と、実際ペーパー資料はなかったですが、ペーパーがあったら投げつけてくるような口調でわたしを怒鳴りつけてきたのです。
わたしは、心の中で「えっっ…、おれあんたの部下じゃないけど」と呟いたのは言うまでもありません。
人って知らず知らずのうちに、染みついちゃうんでしょうね。
彼が、前職で部下に対してどのように接していたのかが垣間見れました。
あぁ、ブラック企業もパワハラという言葉もなかった悲しき昭和世代。
この後起こるべく嵐を予見させるような2つの出来事でした。
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